2005年07月08日

電車の恋・1

世は電車男だそうだ。ちゃっかりビデオに録画しておいた。
ドラマはほとんど見ないが勢いよく流行に乗った。
チビノリダーがあんまりにもリアルで、
各番組に番宣で出ているのを発見するたび、なんかジロジロ見てしまう。
ほんとにねえ、アニメのDVDを買いにくるお客さんそのまんまの姿でねえ。
さすがにケミカルウォッシュのジーパンはないが。

電車での恋、結構よくあることみたいで、私も今までに4度くらいあった。
通勤通学に電車を使っていたのが計7年だから多くはない。
というかいつも不思議に思っていたのだけれど、
大抵疲れきった顔で体で乗っているにもかかわらず、
何を見て何を思って気持ちを傾けてくれるのかと。
満員電車にニコニコしながら乗っている人間なんていない。
経験したことのある人ならわかりすぎるほどだと思うが、
狭い車内はいつも殺伐としていて、
押すか押されるか、取るか取られるか(席を)の仁義なき戦いだ。
友人がいつも言っていた。「電車の中では性格が変わっちゃう」と。
誰もが認める優しくて穏やかな彼女からしてそうなんだ。ましてや私など。


大昔の話。
その人はいつも近くに立っていた。
会社帰り・下りの快速電車、確か6両目一番後ろのドア。
別の車両で痴漢にあって以来、私はそこから乗るようになった。
その人も同じ時間・同じ車両・同じドアの同じ場所にいつもいた。
大きな駅なので物凄い混雑で、踏ん張っていないとあっという間に流される。

私はいつも音楽を聴いていた。
会社から一歩出たらまずイヤホンを耳に突っ込んで音楽。
当時は仕事がかなりハードだったので、
気持ちを切り替えるために意識してそうしていた。
車内では人を探しているか外を見ているか寝ているかのどれかで、
いつもボーッとしていた。何度も言うが疲れていたからだ。

何かこの人いつも近くにいる気がする。
そう思い出したのは確か真夏。その車両に乗り出してから2ヶ月くらい経った頃。
いつも何となく私の近く、しかも背後にいるのだ。
最初は偶然だよな、だって私だし目が合うわけでなしとか思ったが、
さすがに毎日となるとちょっと気味が悪くなり、
確かめようと別のドアから乗ってみた。
いつもの場所からいつもどおり乗ったその人が、いつになくキョロキョロと、
まるで落ち着きなく誰かを探しているかのような素振りをしているのが見えた。

そして半袖が長袖に変わって肌寒くなった頃、
その人が私の降りる駅で降りるようになった。

気味の悪さは最高潮に達していた。
用事があるなら話しかければいい。
コンビニにまでついて来たんだからできるはずだ。
それをせずにただ見送られるのみで、何を考えてやがるのかさっぱりわからん。
何度目かに降りて来られたときは電話ボックスに避難した。
友人に電話をかけ、その人が姿を消すまで話に付き合ってもらった。

その日は特に疲れていて、判断が鈍っていた。
下車したときにまたその人も降りたことを確認したが、
何かもうそれすらもどうでもいいと思うようなやさぐれぶりだった。
ぐったりしながら真っ直ぐに自転車置き場へ向かう途中、ふと気づいた。
私がいつもイヤホンをしているから話しかけて来ないのか?
まさかなと思いながらも、多分初めてその場でイヤホンを外した。
疲れが怖さの上を行っていたんだろうと思う。
その途端、その人が私を追い越した。そして振り向き様言った。

「私は耳が聴こえません」

いきなりで、しかもかなりの掠れ声だったので何が起こったのかわからず、
足を止めて必死に言葉を聞き取ろうとしながら私は頷いた。

「好きな人はいますか?」

その人は「人」のところで親指を立て、私に訊いた。
どうしようと思ったが、正直に言った。頷きながら「はい」と。


(何か長くなったので一旦切ります。ダラダラですみませんね)
posted by 6 at 04:47| 埼玉 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

電車の恋・2

長くてごめんなさいよ。まさかこんなことになろうとは。
続きです。


その人が落胆したのがはっきりとわかった。肩が落ちたのが見えたのだ。
しかし一瞬ののちに微笑んで頷いた。

「ありがとう。それじゃ」

それだけだった。そのままくるりと元来た道を帰って行った。
何ヶ月も何ヶ月も、これを言うためだけにこの駅で降りていたのか。
話しかけられなかったのは、やっぱり私が音楽を聴いていたからだったんだ。
誰だって、自分の都合で相手の邪魔になることをするのは嫌だ。それが一瞬でも。
だから私がイヤホンを外す瞬間を待った。

そして私の好きな人もまた、その電車の同じ車両にいた。
私に「彼氏」でなく「好きな人」の存在を訊いたことからもわかるように、
その人は知っていたと思う。
私の視線の先を辿り、ガッカリした表情を浮かべていたことが何度となくあった。
それは多分、彼がいないことに気づいて落胆する私と似ていただろう。

だからこそ思った。その勇気はどこから来るのだろうと。
もし耳が聴こえなかったとしたら、
私は好きな人に気持ちを伝えられただろうかと。
好きな音楽を聴きながら姿を見ているだけで、
満足と自信のなさをすり替えているような小心者の自分。
答えは明白だった。

泣きながら家に帰った。理由のわからない涙が止まらなかった。
心配した友人が家に来てくれたが、うまく言葉にならなかった。

数日後、私はその人に手紙を書いた。内容はあまり覚えていない。
多分ありがとうとかごめんなさいとか、そんな感じだったろう。
場所が少し離れはしたものの、同じ車両であることには変わらなかったので、
降り際に手渡した。凄く驚いた顔をしていたのを覚えている。

その後、私の降りる駅でまたその人に話しかけられた。
話がしたいと言われたので、当時あった橋の上で並んで話した。

そんなこともあろうかと筆談用に用意してあったノートを取り出すと、
笑って首を振って、「ゆっくり話してくれれば口元でわかるから」と言われた。
どうしてもわからなかったら書くよと。何だか無知な自分が恥ずかしくなった。

名前や住所、年齢や仕事など。
自分が1歳年下だと知ると落ち込むような顔をしたり、
互いの職種がかなりつながりのあるものだとわかって喜んだり、
何だか純粋で可愛らしい人だった。
耳は生まれつき聴こえなかったわけではなく、幼い頃に出た高熱の後遺症だそうだ。
双子の兄弟がいると言っていた。
同じ顔をしているのに一方は耳が聴こえ、一方は聴こえない。
思うことすら無責任だとはわかっているが、切なかった。

凄く寒い日で、私の震えが止まらなくなったのをきっかけに解散した。
別れ際に1枚ガムを貰った。トライデント。今もあるのかな。

それからしばらくして、帰りの電車を待っていた私の前にその人が立った。
「これから飲みに行くんだ」とジェスチャー付きで言いながら、
私に折りたたんだ紙を差し出した。

記憶はそこで途切れている。
私はちゃんと手紙のお礼を言えただろうか。
たとえば「飲み過ぎないでね」と笑って言えただろうか。

手紙には私を応援する言葉だけが書かれていた。
「好きな人を諦めないでください」と。
その後も時々姿を見かけたが、もう話すことはなかった。


ああヘコむなあ。思い出すと必ずヘコむんだこれ。
なんか電車つながりだなーと軽い気持ちで書き始めたらこれですよ。
しかも長編。無駄に長い。まとめるのが下手ですみません。
読み飛ばしてください。

『愛していると言ってくれ』は見ることができなかった。
ちょうど同じようなタイミングで、何でこんな偶然があるんだと恨めしかった。

時々思い出すたびに、その人が幸せであるように結構本気で祈ってしまう。
posted by 6 at 04:44| 埼玉 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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