2005年09月05日

台風一過(6)

前を走る車の後部が光を反射していて眩しかった。
9時半まで30分を切ってはいたが、道も混んではおらず、
普通に行ければ間に合うだろうと思った。

悲しみとは遠かった。
やるべきことを滞りなく進める。スムーズに。間違いなく。
誰にも邪魔させずににゃにゃこの道を作る。
それだけを考えていた。

畑を抜けて時間通りお寺に着くと、住職さんが外に出て待っていてくれた。
棺の中の花の量にまず驚き、にゃにゃこを見て「ああ、いい顔だ」と頷いた。
順番としては、お線香を上げた後に火葬、その後お寺にて供養。
火葬は別の場所ですることになっていたので、
再び車に乗り込み、住職さんに先導されて行くことになった。

仕事が始まる時間帯と重なってしまったために、道はかなり混んでいた。
時折にゃにゃこに声をかけながらノロノロ運転は続いた。
車の中は冷風が当たる腕が痛いほどに冷えていたが、
にゃにゃこを守る保冷剤が溶けていないか、それだけが気懸かりだった。
滅多に遠出しない母が、流れて行く景色を見ながら
トンチンカンな質問ばかりをするので笑った。
いつの間にか新しい道路ができていたりするので無理もなかった。
「なんだか目が回る」とブツブツ文句を言っていた。

火葬場に着いた途端に雨。
あれだけ晴れていたのにも関わらずポツポツと、
やがてボタボタと大粒の雨。
何だこれはと思いながら車を止め、
父と二人で大急ぎで棺のにゃにゃこを施設内に運んだ。
途中、それらしき煙突を見上げて「そうか」と思った。
急に現実に色が付いたようで立ち止まりそうになった。

事務所の隣の小さな建物に祭壇はあった。
指定の場所に父が棺を安置した。
住職さんはにゃにゃこを改めて見ながら、また「いい顔だねえ」と。
「私もたくさんの子達を見送ってきたけど、
こんなにたくさんの花は初めてだ」とも。

一人一人お線香を上げた後、お経を上げてくださった。
私はしんとした気持ちで目を閉じていた。
隣から鼻をすする音がした。母だった。
普段は家族の中で一番冷静な母が、今日は誰よりも涙を流していた。
朝起きてすぐ。棺に移す際に。花を手向けるときに。
長年母の子供をやってきたが、
彼女がこんなにも泣くところを見たことはなかった。
posted by 6 at 21:39| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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