2005年11月02日

世知辛い

父の高校時代からの友人で会社の同期でもあるAさんは入院中だ。
重い病気で去年手術したにも関わらず、再発したらしい。
芳しくない状態は続いており、話はできるが食事が摂れないという。
二人とも故郷は海を渡ったところにある。
多分一緒に就職のために上京してきたのだろう。
おっさんになった今でもあだ名で呼び合っている。

娘の私が言うのもなんだが、父は仕事ができる。
部下を非常に大事にしており、こういう人の下で働くのはやり易いだろうと思う。
休日に電話がかかってくることもしばしばだし、
深夜に電話が鳴ったので何事かと思ったら、
仕事に悩んだ本社の女性だったこともあった(父は支社勤務)。
受話器を取ったのは私だったのだが、出るなり泣いていたので心底驚いた。
浮気でもしてんのかと訝り、陰でちんまりと聞いていたが全く違った。

しかし部下を大事にするということは上に嫌われるということでもある。
なのでご多分に漏れず父もその様子だ。
働く者のために多少の犠牲を払っても職場を改善することは
当然で大事なことだと私は思うが、
損して得を取ることを嫌う人たちもたくさんいる。
事実、父が関わったどの会社も以前より売り上げが上がった。
けれどそれまでなあなあで済んできたことを
「間違っている」と指摘する人間は鼻摘み者になる。
父の会社に限らずきっとどこもそうだろう。
私が上司だったらあんな小うるさいオヤジは嫌だ。

そんなうるさいオヤジは本来なら来年で定年退職するはずだったが、
今現在、上に引き止められている。異例のことらしい。
休日は昼からビールを飲んでご機嫌、
それ以外は読書かにーすけを構うことくらいしかしない。
会社でどうあろうが家庭の中では本当に邪魔っけで、
おまけに仕事を辞めたらほぼ100%の可能性で惚けることが確実なので、
どうなるかはまだわからないが家族としてはありがたい話だ。
父を買ってくれている物好きな上の人がいるらしいのだが、
逆に嫌われ者の父を引き止めなければならないほど会社が傾いているのかと
一抹の不安が過ぎるのもこれまた事実だ。

その話を父から聞いてほっとしていたのも束の間だった。
長期休職中のAさんの元に解雇の知らせが届いた。
会社の人間がいきなり病院に訪れてのことだったらしく、
父はもとよりAさん本人にも寝耳に水の話だった。
仕事中の父にAさんから電話が入り、詳細を聞いたそうだ。
その電話の最中にAさんの奥さんからも父に電話があり、
右耳でAさん、左耳で奥さんの話を聞くという事態に陥ったらしい。
その話を聞かされた後、Aさんは病室の電気を消し、
真っ暗な中で何も言わずにうなだれていたという。
「何十年勤めていても、関係ないんだね」と、奥さんは泣いていたそうだ。

当たり前だが父は激怒した。
病院に行った本人やら関係者やら上の人間やら、
いろいろなところに連絡をして止めて回っている。
話を聞いた母も、血圧が上がるくせに釣られて激怒した。
「血も涙もない!」「因果は巡るんだよ!」等と軽く100回は言っていた。
ここには書けないような、子供みたいな単なる悪口を口走ったのは
不謹慎ながら笑った。割れ鍋に綴じ蓋だ。

多分父は自分のことはそっちのけになっているだろう。
親戚がすべて遠くに住むAさん夫妻が頼れるのは、
現実的にはうちの父しかいない。
「保証人にだけはならないで。それ以外ならなんでもやればいい」
と母が言っていたが、私もそう思った。
父も「それだけはない」と言っていたが、そもそもうちにはそんな金はない。

会社って、きっとそういうものなんだろう。
冷たいことには違いないが、それが大多数の実態なんだろうと思う。
私が過去に勤めていた会社もそうだった。
ペーペーの無責任な視線で人が移り変わる様をたくさん見てきたが、
非情だとしか思えない人事はたくさんあった。
今思い出したが、仲が良かった営業の男性がいきなり退職することになり、
驚きのあまり内線でその人にショックを伝えたところ、
「悲しんでくれるのは○○さんだけだよ…」と暗い声で呟かれたことがあった。

年の割りに元気なおっさんだよなと感心する。
感情の起伏が激しく子供のように素直で単純で、
割とサラリとした性格の母や私たち姉弟の中では浮いていて、
こう言っちゃなんだが鬱陶しい。
しかしその性格が人様のために良いように作用することがあるなら、
まあ死なない程度に好きなように頑張ればいいと思う。
posted by 6 at 16:06| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。